校長ブログ
理科教育について考える
2021.11.19
教科研究
11月19日
学習指導要領が改訂、カリキュラムが再編される中、教科横断的な力の育成が求められています。数学・理科・情報のクロス・カリキュラムなどはその一例。今年からデータ・AI人材育成の取り組みを認定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」がスタートし、小中高校におけるプログラミング教育の導入や大学におけるデータサイエンス系の学部・学科の新設はもはや目新しいことではなくなりました。
宮崎大学の中山迅教授は、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS、2015)において、小4の保護者の18%が理数系の学びが大切とは考えていない点を取り上げ、小中高の学習指導要領は「科学の有用性」を認識することを重視しているものの、科学に基づいた判断を行うための知識、データ、そして妥当な手続きという点で課題があるとされ、日本の理科教育における土台となる部分の学習のあり方を懸念されています。同時に、このような傾向が証拠に基づいて論理的に対話することを軽視する社会全体の風潮と結びつくことに危機感を抱かれています。
また、PISA調査(OECD、2015)における高1を対象とした意識調査に関して日米比較。日本では「実証性」、つまり、実験が真実を確かめる方法であると思っている割合は80.6%、確認のための実験は2度以上がよいという「再現性」については81.2%、科学の本に書かれている見解が変わることがあるという「暫定性」については76.9%となっている一方、米国での実証性は90.0%、再現性は91.7%、暫定性は86.8%であることを挙げられています。
そして、教科書に記載されていることであっても新たな発見があれば学説は変わり、それが自然科学の発展につながるという原理・原則を明示しつつ、教科書の内容を絶対視しすぎている点を言及、課題の一つとして、教科書に科学とは何であるかを教える内容が乏しいことを挙げられています。
大阪大学の岡本紗知准教授らは、日本とカナダの生物の高校教科書を比較して、科学の暫定性についての日本の教科書の記述量はカナダの17分の1程度という結果を発表、科学とは何かについての問いを立てたり、教えたりしないことが弱点になっていることを指摘されています。
日本はこれまで、技術立国として世界をリードしてきました。近年、グローバル化やDX化によって、SDGs時代の科学的リテラシーの育成が急務であることは言うまでもありません。本校においても理数探究教育推進リーダーを中心に時代に対応できる教科指導を展開していきたいと思います。