校長ブログ
海外の大学入試
2021.11.23
大学進学研究
11月23日
現在、日本では大学入試改革が進められていますが、欧米の大学もまた同様。国立情報学研究所の船守美穂准教授は、その理由を、進学率の向上とともに、居住地や経済格差によってこれまで大学に入学できなかった層を取り込むために、厳格な入学選抜基準を多様化する必要に迫られたからだと述べられています。
アメリカの大学入試システムは、全米標準テストと言われるSATやACT等の結果提出を義務づけ、合否判定の資料としてきましたが、現在では1,000以上の大学が方向転換、点数は参考程度に留めています。背景には受験費用に伴う平等性、高校の成績で概ね判定できるという判断があります。また、エッセイを要求する大学は全体の約2% にすぎず、ハーバード大学がエッセイを廃止したのを契機に、必須化しない大学も増加しています。さらに、高額な学費に対して、奨学金や授業料減免措置でカバーする制度も充実させるといった施策も行われています。
イギリスのケンブリッジ大学では、環境に恵まれず、入学基準をクリアしなかった学生を大学に受け入れ、教育する「移行年」の制度を導入しています。ドイツではアビトゥア(高校卒業証明)が大学入学の条件でしたが、最近では廃止する傾向が見られます。同時に、大学の授業と企業における実習を両方受け、学位を取得する制度も設けています。
日本の大学入試改革の出発点は、グローバル化や働き手の減少という社会の構造変化への危機感から。人材の質を飛躍的に高めるには知識偏重、一点刻みの入試からの脱却、そのためには 、入試を能力や意欲を多面的に評価するものに転換し、高大接続が必要という発想です。囲い込みや学生の学力不足につながると揶揄される従来の入試に教科・科目、小論文、面接等を加味し、学力の担保を図ろうとしています。欧米の改革とは共通する部分もあれば対照的な部分もあります。
少子高齢化の中で、定員割れの危機にさらされている大学は現在、約4割以上あり、新しい層を積極的に取り込み、適切な教育をして、社会に送り出すことが求められています。大卒者がキャリア・アップするために、大学教育を受けることを望むような魅力ある専門教育の再構築も急務です。加速する大学改革の中、中高生の基本的な立ち位置は、基礎学力の蓄積と大学入試改革の情報収集であることを忘れないでほしいと思います。