校長ブログ

着眼大局、着手小局

2021.11.15 カリキュラム・マネジメント

11月15日

 カリキュラム・マネジメントを実践する際、「着眼大局、着手小局」の発想は重要なポイントです。今回は、他府県の私学の新任教頭からの助言依頼にお答えします。 

DSC05299.JPG

T先生: 先生の学校とは府県が違いますが、私は昨年、教頭に任命され、現校長の下で様々な「改革」に立ち会ってきました。私自身、現在の勤務校に着任して21年目です。学習指導要領が新しくなり、センター試験が「大学入学共通テスト」に代わり、学校教育のあり方が見直されている今、少子化の影響と相俟って、どの学校でも大なり小なり教育改革が進められています。勤務校でもご多分にもれず、様々な取り組みがなされてきたわけですが、組織的運営という点ではまだまだ課題があります。本校の校長から一度、先生のところへ行ってヒントをいただいてはとどうかというご助言がありましたので、ご訪問した次第です。

校長:ご苦労様です。組織的運営で課題ということですが、少し抽象的で、内容が多岐にわたる可能性があります。限られた時間での対応しかできないため、断片的にならざるを得ない点があることをお許しください。どのようなことからお話したらよいでしょうか?

T先生: 先生がこれまで着任された学校は、カリキュラム・マネジメントという名の下に、数年経つと見違えるほどガバナンス力が強化され、大学合格実践が向上、中高入試も志願者が増加し、ワンランク高いレベルの入学者が増えるとお聞きしております。どのような視点から学校改革をなされるのか、そのあたりをお聞きできれば幸いです。

校長:生徒の成長が顕著な学校は、生徒個々が伸びを実感しており、そのため進路満足度が高く、結果、大学合格実績は安定的であり、自然と受験生が集まってきます。また、そのような学校は、数年先のビジョンが明確であり、生徒のみならず、全教職員が何事においてもチャレンジ精神旺盛、常にポジティブな姿勢で取り組みを行っているため、「生徒-保護者-教師」の三位一体での成果がよい形となって現れています。一方、停滞している学校は前年踏襲型で、指示待ちが多く、保守的・受動的な校務運営となっているため、時代の変化から取り残されているケースが散見されます。

T先生: おっしゃる通りですね。私のところはどちらかというと後者です。

校長:私は改革というより、いつも課題を明確にし、中長期的ビジョンの下、改善すべき点は改善するというスタンスをとっているだけです。

T先生: なるほど。改革ではなく、改善ですか...なにか壁になることはありますか?

校長:壁というより"できない"と理由として、はじめは「ヒト・モノ・カネがない」というイクスキューズから入ることが多いですね。例え、建設的な議論を尽くそうとしても、課題があればペンディング、最終的には先送りというのはどこにでも見受けられる典型的な衰退パターン。このような形骸化した前近代的発想では、学校は後退する一方で、"発展的解消"が期待できず、負のスパイラルに陥ってしまいます。

T先生: そのような場面ではどのように対処されてきたのでしょうか?

校長:何事においても結果を気にせず、勇気をもって一歩踏み出してみることではないでしょうか?つまり、失敗を恐れず、なんでもやってみること。"ないものねだり"をする前に、知恵を絞って目の前の小さな課題の改善余地を探り、"小さな"成功体験を積み重ねていくのが常套手段。学校を変容させていくためには特効薬などありません。また、「できる・できない」の差は、能力によるものではなく、あくまでも意識の問題だと思います。私は、いつも事務局長や教頭には、管理職に率先垂範の姿勢がなければ、たとえどんなに有意な取り組みをしても教職員の意識や行動、職場の風土が変わることは絶対になく、結局、他人事になってしまうと言っています。だからこそ、「着眼大局、着手小局」の視点が不可欠とも付言しています。

T先生: 抽象的な質問で申し訳ありません。先生が書かれた実践報告や論文を読み返してもう一度、じっくり勉強してみます。

校長:「改善に終わりなし、実践こそ全て」ですよ。"生徒First゛を合言葉に常に謙虚な姿勢で頑張っていきましょう。