校長ブログ

全校集会

2021.10.26 学校生活
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 25日、全校集会を行いました。各種表彰に加えて、これまでの振り返りも含め、中学生向けの講話と高校生向けの講話を行いました。


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 おはようございます。今回の全校朝礼では、講話を2つしたいと思います。1つ目の講話は主に中学生、2つ目の講話は主に高校生向けですが、2つとも理解できるよう集中度を高めて聞いてください。

 1つ目の講話のテーマは「話し上手になるにはどうすればよいのか」です。最近の授業では、自分の意見を述べたり、グループで議論したりするなど、人前で話す機会が増えてきました。最初から人前で流暢に話せる人などいませんし、ましてや自分の言葉で、聞き手を説得できるメッセージを発するのはなかなかたいへんなことです。しかし、新学習指導要領において思考力・判断力・表現力の育成が求められている以上、言葉を使う経験を積み重ね、表現力を高めていきたいものです。

 そのためには、日頃からニュースを見る、新聞や本を読むなどして背景知識を豊かにした上で、伝えるべき内容を整理、自分の考えを伝わりやすく組み立てる習慣づけが必要です。対面であれ、オンラインであれ、聞き手の集中力には限界がありますから難しい言葉や専門用語は避け、ポイントを整理し、確認・練習するなど、事前準備に工夫を凝らしたいもの。伝える力は、その人自身の姿勢を示すのと同時に、魅力の一つになるはずです。

 自ら積極的に質問することは勇気のいること。流暢でなくてもよいのです。たどたどしくてもまずは話を切り出すことによって情報を共有し、問題意識を探り、刺激を受けることがコミュニケーション力を高める土台となります。とにかく、特定の話題について言葉を交わし、一緒に考える姿勢をもつことが第一歩。まずは自己紹介から始め、自らを見つめ直すところから始めてみてはいかがでしょうか?

 話し上手は聞き上手とも言われます。現地取材のために訪れたエリアは40カ国・地域を超え、この10年、移民・難民問題にもフィールドを広げているという増田ユリヤさんは、地元の人々と時間を共にし、相手が話をしてくれるまで待つことで貴重な言葉を引き出すことができ、自然と知りたいことや自分で確かめたいことがわき上がってくるとおっしゃっています。かつて高校で教壇に立っておられたとき、「自分の常識だけで判断しない」をモットーに、生徒たちと向き合い、同時に、リポーターとして人々の声に耳を傾け、人間を知る中で「伝えたい」という思いが芽生えてきたそうです。参考になる事例です。(校長ブログ2021.4.5

2つ目の講話のテーマは「本質を見抜く力」です。

 アメリカのマサチューセッツ工科大学で、約300万人がツイッターで広めたという12万件を超える情報に関する分析がなされ、「偽りのニュースほど広く、速く伝わる」という結果が発表されました。

 情報を受ける側が惑わされる典型として、稀な出来事でもメディアなどで頻繁に発信されると記憶に残り、結果、フェイクニュースや誤解が生まれ、実際の出来事とはかけ離れたものになるというもの。つまり、人は、目新しい情報に踊らされやすいということです。

 情報の流通における課題という点では、SNSにおける「フィルターバブル」を懸念する声があります。これは、表示される情報には偏りがあり、新たなジャンルや分野に関心を持つ機会がなくなるというもの。つまり、思い込みです。一例を挙げると、アメリカの大統領選において、フェイスブックの画面に候補者支持を伝える投稿が繰り返し表示されるとその影響を受けやすいということが話題になりました。デジタル化が進んでも多忙な読み手は、取捨選択する前についSNSなどに依存してしまいがちという現代の諸相を映し出している事例です。

 新型コロナウイルス感染症についての人々の関心の高さの推移に関する共同研究によると、危難が世界中に続いているにも関わらず、閲覧回数がピークだったのは最初に緊急事態宣言が出た昨年3月〜4月であり、増加傾向を示した7月頃に再び上昇した後、また下降線をたどったとのこと。集団心理として、人々の関心が一定の水準を超えると、その後の情報収集に対する意欲が低下するということになります。

 デジタル社会は多様な情報化社会とも言い換えられます。私たちを取り巻く環境は日々、刻々と変化し続けていますが、人が生きていくために必要なものは、物事の本質を冷静に見極める力。デジタル技術のプラス、マイナス両面を意識しつつ、人間が生まれながらにしてもつバイアスについてもコントロールしながら常に真実に目を向ける姿勢を持ち続けてほしいと思います。(校長ブログ2021.9.14