校長ブログ

迷走する大学入試改革への対応

2021.09.24 大学進学研究
9月24

 文科省は、20251月に実施される大学入学共通テストについて、記述式と英語民間試験の導入を正式に断念したことを発表しました。今回の大学入試改革は、2012年以降、グローバル人材の育成などを目途に、知識偏重や「一発勝負」の入試からの脱却をめざしたものでしたが、共通テストの年複数回実施、「基礎レベル・発展レベル」への2段階化はじめ、多くの案が廃止となり、迷走した感は否めません。

 現行の日本の大学入試は、実態として、日本の社会秩序の根幹となる選抜方法になっていますが、入試方式の議論より、高校を卒業して一度、社会を経験してから改めて大学に入る、あるいは、大学を卒業し、社会人になってからの学び直し(リカレント)がしやすくなる仕組みづくりをする、もしくは、自分とは違う価値観や考え方に触れ、新たな生き方が世界にあることを知り、刺激を受ける(EdTechを活用した)グローバル教育を試みるといった学び方改革を精査するのが優先順位ではないでしょうか?

 いずれにせよ、中高現場では、新学習指導要領に対応する最適解を求める探究学習、実践的な英語力や思考力・判断力・表現力の育成など、時代が求める学力・能力の評価問題等への取り組むを進めていかなければなりません。

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 これまでの大学入試を振り返ると、各教科の中で体系化された知識・技能が測られてきました。しかし、情報化が進み、社会・経済が流動化、多様化する中で活躍する人財を育成するには学力観を見直し、課題発見・解決できる主体性をもつ生徒の育成が必要です。同時に、18歳人口の減少に伴い、大学進学のあり様も変容し、学力試験を受けずに入学する"学力不問"の学生が約半数となり、学力低下が問題視される中、高大接続のあり方まで見直さなければならなくなってきています。

 当初、記述式と民間試験は、本年度1月に実施された大学入学共通テストから導入される予定でしたが、採点を民間委託が計画されていた記述式は採点者の確保とミスをなくすことが困難であり、民間試験は居住地や経済状況で受験機会に格差が生じるという公平性の点で問題となり、廃案に至った経緯があります。

 この度、文科省は、2025年から、プログラミングの知識を問う「情報」を追加し、教科・科目を現行の6教科30科目から7教科21科目にスリム化することを示しました。具体的に言うと、これまで数学の枠で実施されていた「簿記・会計」「情報関係基礎」は廃止、10科目に分かれていた地理歴史と公民は、必修科目となる「歴史総合」「公共」などと組み合わせて6科目にし、理科は基礎科目が1つになります。

 これらは、来年4月に入学してくる新入生から学習指導要領の改訂に伴い、カリキュラムが再編されるため、それに対応していくものです。出題は大学に委ねるとはいうものの、新教科として加わる「情報」についてのバックグラウンドには情報リテラシーやプログラミング、データ処理などを問い、文系・理系を問わず広くデジタル技術を使いこなす人材を育成するという方向性があります。(校長ブログ2021.4.28

 本校では、新学習指導要領におけるコンセプトに対応するため、一例として、7月より理数探究教育推進リーダー、EdTech教育推進リーダーを新設、数学科、情報科、理科の教科会を併合し、新しい時代の理系教育をリードしていける体制をつくり、具体的なシラバス作成に取りかかっていただいています。″学びの選択″による個別最適化学習を通じて、生徒たちが自らどういう社会をつくりたいか、どういう人生を送りたいかを表明でき、活躍できる未来社会のグランドデザインを描いていきたいと思います。