校長ブログ

本質を見抜く力

2021.09.14 トレンド情報
9月14

 2018年、MIT(マサチューセッツ工科大学)において、約300万人がツイッターで広めたという12万件を超える情報(200617)に関する分析がなされ、サイエンス誌に「偽りのニュースほど広く、速く伝わる」という結果が発表されました。

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 情報を受ける側が惑わされる典型として、稀な出来事でもメディアなどで頻繁に発信されると記憶に残り、結果、フェイクニュースや誤解が生まれ、実際の出来事とはかけ離れたものになるというもの。つまり、人は、目新しい情報に踊らされやすいということです。認知科学に詳しい鈴木宏昭氏(青山学院大学教授)は、情報の受け手がよく起きていることと思い出しやすいことを勘違いしてしまい、「利用可能性ヒューリスティック」が働くと述べられています。

 情報の流通における課題という点では、SNSにおける「フィルターバブル」を懸念する声があります。これは、表示される情報には偏りがあり、新たなジャンルや分野に関心を持つ機会がなくなるというもの。つまり、思い込みです。一例を挙げると、アメリカの大統領選において、フェイスブックの画面に候補者支持を伝える投稿が繰り返し表示されるとその影響を受けやすいということが話題になりました。デジタル化が進んでも多忙な読み手は、取捨選択する前についSNSなどに依存してしまいがちという現代の諸相を映し出している事例です。

 新型コロナウイルス感染症についての人々の関心の高さの推移に関する共同研究(2021.6 日経新聞+日経イノベーション・ラボ)によると、危難が世界中に続いているにも関わらず、閲覧回数がピークだったのは最初に緊急事態宣言が出た昨年3月〜4月であり、増加傾向を示した7月頃に再び上昇した後、また下降線をたどったとのこと。集団心理として、人々の関心が一定の水準を超えると、その後の情報収集に対する意欲が低下するということになります。最近では、各自の関心事とメディアとして伝えたい情報を組み合わせて探る「最適化問題」に特化した量子計算機を使う研究も開始されているようです。大人の探究活動にも終わりがありません。

 デジタル社会は多様な情報化社会とも言い換えられます。私たちを取り巻く環境は日々、刻々と変化し続けていますが、人が生きていくために必要なものは、物事の本質を冷静に見極める力。デジタル技術のプラス、マイナス両面を意識しつつ、人間が生まれながらにしてもつバイアスについてもコントロールしながら常に真実に目を向ける姿勢を持ち続けることが時代のコンセンサスなのです。