校長ブログ

数学の美しさを求める探究

2021.08.09 教科研究
8月9

 スペインの有名な建築家であるアントニ・ガウディ(18521926)の奇抜な建築物は緻密なまでの数学的計算に基づくと言われています。

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 ガウディ建築でよく使われるのが2次方程式で表す放物線に似たカテナリー曲線。これはロープや電線などの両端を固定して下に垂らしたときにできる曲線のことで、日本語では懸垂曲線、1960年頃、スイスのベルヌーイやドイツのライプニッツなどの数学者によって数式化されました。ガウディは、ひもと重りを使ってカテナリー曲線を作り、多くの建築物をデザインしたそうです。日本でも山口県岩国市にある錦帯橋は、5連の木造アーチに形状がカテナリー曲線になっているという専門家の指摘もあります。

 17世紀、哲学者・数学者であるデカルト(仏)は、x軸やy軸などの座標軸を使い、平面や空間の中の点を表す方法と変数という概念を生み出しました。結果、円以外の曲線を数式で表せるようになり、その曲線から素晴らしい建築物が誕生したのです。

 数学の歴史をひもとけば、古代ギリシャの数学者であるピタゴラスは音の美しさから数学の真理に迫りました。一説には、散歩の途中、鍛冶屋が鉄をたたく音には美しく響きあうものとそうでないものがあることに気づいたとのこと。美しく響きあうときは、ハンマーの重さの比が「2対1」や「4対3」になっているという発見がピタゴラス音律の発明につながります。人間が美しいと感じる音の響きに数学的な規則が潜んでいます。この発見からピタゴラスは音階や音程を探究し、すべての真理が数によって成り立っているという結論にたどりつき、ピタゴラスの定理をはじめとする数学の定理を生み出していったそうです。

 最近の数学の探究で言えば、フランスとスイスの数学者が提唱した「ABC予想」。これは、正の整数ABとその2つを足したCに対して、それぞれの素因数を掛け合わせたDと比べるとある特別な関係が成り立つというものですが、2012年、望月新一氏(京都大学教授)がその証明方法について新たな理論を打ち立てたと発表、話題になりました。まだまだ乗り越えなければならない課題はあるようですが、数学の美しさを求める探究は世界各地で続きそうです。