校長ブログ

火星飛行

2021.06.16 トレンド情報
6月16

 NASA(米航空宇宙局)が超小型ヘリコプターの火星での飛行試験に成功したと発表したのが4月。地球以外の天体でヘリが飛ぶのは初めてであり、これまでの星の周りや地上を走行しながらの探索に飛行による探索が新たに加わりました。  

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 ヘリの名前は「創意工夫」を意味するインジェニュイティ。胴体のサイズはソフトボールほどで、重さは1.8キログラム、高さ49センチメートルです。火星でのミッションは、湖だったと考えられている場所にある物質を分析して、火星に生命が存在していたかどうか調べることです。

 試験飛行は、地上から3メートル上昇して空中に30秒間とどまり、その後、着地して予定終了。今後、距離や時間を延ばしながら複数回の飛行を試みていくとのこと。本格的な探査ではないものの、夢が広がる朗報です。   

 ヘリや飛行機が上向きに働く揚力が重力と釣り合うことで飛行できるのに対し、重力が地球の3分の1しかない火星では飛行がはるかに困難。揚力は大気の密度に比例して大きくなります。

 火星の大気密度は地球の100分の1しかなく、他の条件が同じなら得られる揚力も100分の1になってしまいます。そのため、機体を軽くして、翼を高速回転できるように設計して、必要な揚力を確保したとのこと。また、温度変化にも耐えられるように、特殊な太陽電池を備えるなど、まさに「創意工夫」の賜物となっています。

 歴史的には、陸上での火星探査のスタートは1976年の「バイキング1号」から。1997年には車輪を備えたローバー(探査車)が開発されます。2004年、「スピリット」が火星に着陸、続いて、「オポチュニティ」が火星にある大量の水を発見。探査機の大型化は進み、2012年には重量が約1トンにも及ぶ「キュリオシティ」や「パーシビアランス」が登場します。現在、NASAはさらに大型開発をもくろみ、複雑な地形の場所を飛んで調べたり、地上よりも広い範囲を探査したりするレベルにまできているようです。

 火星飛行の構想は、半世紀以上前から存在し、アメリカでは1952年に書籍が出版、1978年には論文が発表されています。日本でも火星の地下に入るドローンの研究など、先端的な取り組みが進められているとのこと。ロボット技術は進展を遂げ、2020年には日本のはやぶさ2が小惑星「りゅうぐう」に着陸し、中国の「嫦娥(じょうが)5号」は宇宙から無人探査機が試料を採取して持ち帰っています。宇宙探査機はほとんど無人ですが、NASAの「アルテミス計画」のように、有人の月調査も計画されています。宇宙物理学に誘ってくれる興味深い内容です。