校長ブログ
始末の精神
2021.06.19
学校生活
6月19日
関西の多くの商家の家訓には、帳尻を合わせる、うまく終わるように物事を進めるという意味で「始末の精神」が根づいています。これは、節約・倹約、物を大切にし、長く使うといったことですが、その根底には2030年までに実現をめざす国連の開発目標SDGsにも通ずる倫理観があります。
近年、「モッタイナイ」や「イタダキマス」といった言葉が国際語になってきた背景には、「持続可能な社会」づくりの土台とも言える自然の恵みに感謝し、資源を無駄使いせず、環境を守り、調和しながら暮らすといった感性があります。
「始末」という言葉は、一見、「始末する」「始末におえない」など、マイナス・イメージで捉えられがちですが、大辞林によれば、「物事の始めと終わり。始めから終わりまでの細かい事情、または成り行き」「物事の締めくくりをつけること。後片付けをすること」「浪費をしないように気をつけること」などだそうです。大阪では、野菜の皮や芯、魚のアラなど、ふつうなら捨ててしまうものを食材として活用した料理をつくるという伝統があることから「始末の料理」と言われているくらいです。
浅利美鈴氏(京都大大学院地球環境学堂准教授)は、産学公連携でSDGsを推進し、リユース拠点を開設、留学生が置いていった衣類や食器などを安く販売しているとのこと。研究室ではゴミの分別を徹底し、帰国する留学生の生活用品の廃棄を防ぐため、研究室の横に衣類や食器のリユース拠点を作り、最近では食品ロスやプラスチックゴミの削減に取り組むなど、多彩な活動を展開されています。昨年は、「持続可能な社会づくり」において、里山と都市の連携や関係構築が重要と考え、企業や京都市北部の京北地域と連携、SDGsの研究や様々な教育実績を試みられています。
"地域に開かれた学校"創造に向けて、計画性と無駄を省く合理性による質素倹約の美学を伝統に融合して、現代の暮らしに根ざした持続可能な生活を生み出していきたいと思います。