校長ブログ

ヤングケアラー

2021.05.06 トレンド情報
5月6日

 ヤングケアラーに関する実態調査(厚労省+文科省)が公表されました。ヤングケアラーとは、文字通り、YOUNG(若い)とCARER(世話する人)を組み合わせたものですが、端的に言えば、家族の介護や世話を担う18歳未満の子供のこと。歴史的に見れば、1980年代にイギリスでその研究が始まり、結果、自由な時間が取れず、勉学や進路に影響を及ぼすだけでなく、健全な発育や人間関係の構築を阻むとされています。

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 今回の調査は、全国の中2生約5,600名が対象。そのうち全体の5.7%にあたる約320名が「世話している家族がいる」と回答しており、1日7時間以上ケアに従事する子供は1割程度。ケアの対象は兄弟姉妹が約6割と最多であり、父母(23.5%)、祖父母(14.7%)と続きます。また、ケアのためにできないこととして、「自分の時間が取れない」が20.1%、「宿題や勉強の時間が取れない」が16.0%となっています。

 一方、自身がヤングケアラーと認識している子供は1.8%であり、実態が見えにくくなっているのもまた事実。近年の少子高齢化や核家族化に伴い、家族の世話を担わざるを得ない子供が増加、就学と両立する際の負担が大きな現状があるため、政府はヤングケアラーの早期発見や支援策等を盛り込んだ「骨太」の方針を策定する方向性です。イギリスやオーストラリアではすでに公的支援が始まっており、国内では埼玉県が2020年に「ケアラー支援条例」を施行しています。

 上智大学の酒井朗教授(教育社会学)は、学校で悩みを打ち明けにくいヤングケアラーについて、教員には欠席状況等から支援の必要性を察知する想像力を求め、遅れがちな学習を地域と連携して支援するといった教育機会の工夫を説かれています。また、西南学院大の安部計彦教授(児童福祉学)は、虐待対応に追われる地域が多く、支援が不十分であり、早期発見と家庭環境を把握することが重要と言及されています。

 世界情勢を100人の村に例え、50人が栄養失調に苦しみ、70人が文字が読めず、80人が標準以下の居住環境、1人が瀕死の状態、1人が大学教育を受け、8人が銀行に預金、財布にお金がある割合との言われて久しいものがありますが、学校に行きたくても行けない子供もいるのです。国内外の現状に目を向け、地に足がついた地道な取り組みを進めていきたいものです。