校長ブログ
アダプティブ・ラーニングへの第一歩
2021.05.04
EdTech教育
5月4日
政府は、ビッグデータを活用した指導法の改善や教育政策に役立てることを目的として、教育のICT化に向けて、包括的とも言える検討を進めています。一例として、小中学生の学習履歴やテストの成績をマイナンバーにひも付けてオンラインで管理する仕組みをつくる方向性を打ち出しました。具体的には、文科省が自治体に学校単位での導入を促す「学習マネジメントシステム」を使い、2023年度にも試行する模様。これは同時に、海外に比べて遅れていると言われる教育分野のICT化を加速させ、優秀な人材育成につながります。
教育再生実行会議は、ICT化に必要な課題を整理し、① 学習履歴の活用、② 教育ビッグデータの効果的な分析・活用、③ ICT活用の抜本的拡充に対応した情報基盤、④ デジタル技術による教育手法や学務の高度化・効率化、⑤ デジタル化の担い手となる人材育成などを挙げています。
マイナンバーの活用は、教育再生実行会議の指摘するビッグデータの効果的な分析・運用に対応します。教員は児童・生徒の成績や学習履歴をインターネット上でデータを管理するクラウド技術を使ったシステムに入力し、学習意欲の変化や到達度を測り、授業改善に役立てるだけでなく、情報共有にも活用することができます。また、高校進学後もスマートフォンで学習データを確認し、必要な学びを効果的にできるようにするなどの効果的な使い方も想定されています。
現状を鑑みると、デジタル化したデータを指導や学校運営に活用する欧米諸国とは違い、児童・生徒の成績等は紙ベースで保管する学校が大半。実現には、運用前のチェックリストの作成から個人情報保護制度見直しを踏まえた取り扱い、教員研修などの仕組みづくりが必須となりますが、関連法案がまとまり、教育分野でのクラウド活用が進めば、アダプティブ・ラーニング(個別最適学習)への第一歩となることが期待できます。
民間企業ではDXの担い手を育て、キャリアチェンジをアシストするために、プログラミングなどを学べるオンライン研修が活況です。DXの本質は、デジタル技術を使った業務効率化にとどまらず、事業モデルを抜本的に変革することであり、対象は、一般社員のリカレント教育(学び直し)にあります。米国企業はリカレント教育を積極活用しています。例えば、アマゾン・ドット・コムは2025年までの6年間で7億ドル(約760億円)を投じ、社員10万人に向けた講座を提供、グーグルもAIなどを学べるオンライン研修プログラムを公開しています。
一方、スタッフの育成をOJT(職場内トレーニング)に任せてきた日本の多くの企業の場合、スタッフ育成をOff-JT(職場外トレーニング)に投じる費用は、厚労省(2019)によると、スタッフ1人あたりにつき、1万9千円。ちなみに、内閣府によれば、リカレント教育を受けた者のうち収入が1割以上増えた者の割合は、受けなかった者を13.1ポイント上回ったそうです。
[参考]政府はデジタル教科書の普及に向け、授業で使える時間の制限をなくす方針を固めています。授業時間数の2分の1未満とする文部科学省令等を改正し、2021年4月からの適用を目指すとのこと。目の疲れなどの健康面にも配慮、使用時の望ましい姿勢や教員の指導方法などの指針を作成。紙の教科書と同様、購入費を国が負担する検討も進め、2025年度にすべての小中学校での導入が予定されています。