校長ブログ
コロナ禍でのグローバル教育
2021.05.03
グローバル教育
5月3日
グローバル化が進展する中、これまで多くの高校や大学は、政府の後押しもあり、短期・長期留学、語学研修、海外インターンシップなど、様々なプログラムを実施してきました。しかし、コロナ禍によって事態は一変、留学中の学生の大半は帰国し、予定されていた留学プログラムも中止せざるを得なくなりました。
コロナ禍を契機に、"新しい生活様式"づくりの一環として、渡航する意義や目的が問い直され、留学プログラムの再構築が求められています。例えば、校内と地域の資源を活用した低コストで全生徒を対象に実施できるプログラム、対面と遠隔でのコミュニケーションを融合したプログラム等々。留学制度についても学びの成果がより高められるよう、期間を数週間とし、前後に遠隔共同授業を組み込むといったことが考えられます。大学では、国内にいながら海外の大学生と共同で学ぶオンライン国際交流学習COIL(Collaborative Online International Learning)が広がりつつあることもヒントになります。比較・国際教育学を専門とする一橋大学の太田浩教授は、コロナ禍においてグローバル教育の危機をチャンスと捉え、質を伴った遠隔教育を組み込む必要があると述べられています。
現在、日本の中学高校では、授業をライブ配信して生徒が同時に学ぶ方法と事前に準備した録画で個別に学ぶ方法が導入されていますが、ICTを活用した多様な学びへの移行は生徒の語学力の育成とICTスキルを高められる体制づくりも含めてまだまだ課題があります。
欧米では、コロナ禍以前から、長距離移動に伴う高い旅費と航空機から排出される Co2 の環境への負荷が指摘され、問題視されていたそうです。今風に言えば、「3密」を回避し、ICTを活用したバーチャルな交流やオンライン会議にリセットすべきだということになります。つまり、"内なる"交流を具体化することによって、低コストで環境にやさしく、より多くの学生を取り込んだ教育実践が可能になるという主張に結びついています。
無人走行車が数千キロを走破、コンピューターが人の顔を認識、アメリカのクイズ番組の最強チャンピオンに勝つ時代です。グローバル化やDX化は加速し、学校で習った知識だけでは社会で通用する力にはなりません。学ぶ内容だけでなく、知識の活用、つまり、何ができるようになるかが問われています。新しい学びのスタイルは、多くの知識を暗記し、早く答えを出すというのではなく、自ら問い、考え、解決策を求めて、コミュニケーション力を駆使、新しい価値を見出すという方向性です。
グローバル教育を進める上で、忘れてはならないのが日本文化の発信。日本には世界に誇れる文化がたくさんあります。例えば、劇的に変化する外部環境を前にして、"企業30年説"が囁かれる中、日本は長寿企業大国と言われ、100年以上の長寿企業数世界一です。持続可能性(sustainability)いう点で言えば、日本企業の互助精神や家族主義的な経営精神が世界から評価されているのもまた事実。自分の身の回りに目をやり、日本文化とは何か考えてみてほしいものです。
本校では、本年度から「未来探究コース」を立ち上げ、未来型リーダーシップをもつ女性育成に向けてグローバルな視点から様々な実践が行われており、通称、「山手ルネサンス」にふさわしい教育システム構築に邁進して参ります。
[参考]「練習1万時間の法則」という言葉があります。これは何事もその道を極めるには特効薬などなく、地道な努力を繰り返す姿勢が不可欠で、その尊さを示したものです。クラスで皆と机を並べ、共に習得し、共に活用する時間は大切ですが、学習内容を単なる断片知識からより高い次元まで探究できるようになるためには、一人でコツコツと勉強し、考える時間を確保し、様々な領域の背景知識を養うことも中高時代にやっておくべきことなのです。