校長ブログ
コロナ禍での大学入試を振り返る
2021.04.15
大学進学研究
4月15日
コロナ禍の中で実施された2021年度の大学入試は、出願受け付け開始後に個別試験の中止を発表する大学が出るなど、異例の対応が相次ぎました。受験生心理としては、厳しいものがあります。共通テストでの結果が思わしくなく、2次(個別)逆転を考えていた受験生や共通テストのみの判定ならば、合格ラインが上がるのではないかという不安に苛まれ、出願先を変えた受験生がいたことは否めません。文科省によれば、緊急事態宣言を受けて、オンライン実施への変更、面接試験や東京での試験中止と様々な変更が加えた大学・短大は160校とのことです。(2月26日時点)
共通テストでは、コロナ休校に伴う学習の遅れに配慮して設けられた第2日程の設問に関して、第1日程との難易度に差が生じ、公平性が損なわれる可能性があると指摘する専門家もいます。また、多様な学生の確保や志願倍率の維持などを目途に実施された総合型選抜や学校推薦型選抜は志願者が増えたものの、オンライン面接における公平性や教員の負担増が論じられています。
大学は入学者を受け入れるにあたって、どのような資質や能力をもった学生を取りたいのかというアドミッションポリシー(AP)に基づいて入試を実施します。国立大の場合、入学者に求める資質のうち、共通の基礎部分を大学入学共通テスト、大学個別のAPにあたる能力を個別試験で測るのがふつう。感染リスクとのバランスを考え、変更点を加えたり、中止したとしても、新入生にどのような影響があったのかを検証し、APに基づくテスティングや個別試験のあり方を再考しなければならないでしょう。
18歳人口は減少の一途を辿り、国公立大個別試験の志願者数は前年より約1万4千人減少して約42万5千人。募集人員に対する倍率は4.3倍で志願者数、倍率とも大学入試センター試験が1990年にスタートして以来、最低です。近年、大学入試改革が叫ばれ、英語民間試験の活用など、新たなイノベーションが模索されたものの、諸問題のために頓挫しました。さらに、コロナ禍も重なり、2年前には告知するという入試変更点も形骸化してしまい、受験生は最後まで翻弄されました。どのように"受験生ファースト"を実践するか、山積した課題に対応することが急務となっています。
[参考]インタースペースの調査(小・中学生を持つ母親1,037人、複数回答)によれば、小学生の24.3%と中学生の54.2%が学習塾や進学塾に通っています。小学生は32.2%が「受験のため」(32.3%)、中学生は52.4%が「成績が不安なため」と答えており、通塾目的が受験対策から学習面の不安へのフォローに変化します。