校長ブログ

数学を楽しむ!

2021.04.23 教科研究
4月23日

 日常生活に数学の知識が応用されています。例えば、偏微分方程式による台風の進路予測、衝突回避プログラムによる車の自動運転やドローンの操縦等々、枚挙にいとまがありません。仕事の一部がAIに代替され、データサイエンスがビジネスで不可欠とされる昨今、その基盤とも言える数学の重要性が見直されています。

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 西成活裕氏(東大先端科学技術研究センター教授)は、文系の学生や社会人にも数学が必要であることを指摘しています。学習の仕方については、論理的思考の育成を最重要視。細かい計算ができなくても、どの理論を使えば、どんな結果が出るかが分かるだけで十分とされています。そして、学校教育において応用数学を教えていないこと、大学にも応用数学科がないに等しいこと、教員の多くが理論中心の純粋数学を主としてきたことを例示した上で、ご自身がそれを乗り越えて様々な勉強を続けるうちに応用を目的とした教え方ができることに気づかれたそうです。

 同氏は、小学校で算数・理科・音楽を同時に教えた経験も踏まえ、融合型による応用数学への興味拡大とAIやデータサイエンスを学ぶ手立てとして、中学は代数、解析、幾何の3分野を5~6時間で理解できるとされています。現在は理論と応用の両方が分かる、融合型の教育を実践できる人材を育てているとのこと。同時に、個々の学習目的を明確化させ、個別最適学習によって短時間で効率的に学べる教え方を確立する必要性も述べられています。

 数学と言えば、昔から"美しさ"や"自由さ"を重視してきた感がありますが、現代社会の諸相が変容をもたらしています。ジャズピアストであると同時に、数学教育に従事してきた中島さち子氏は「ひとつの着想から自分が開ける瞬間がある。数学は世界へのアプローチを変える」とおっしゃっています。1本の補助線が既成概念を取り払い、新しい世界が見えてくると... 。日常生活でもちょっとした"きっかけ"が固定観念を超えた視点を与えてくれることを考えれば納得できます。

 京都大学高等研究院の院長で、数学界最高の栄誉と言われるフィールズ賞を受賞した森重文氏は、数学には「論理的な美しさ」と「論理をこえた発想の美しさ」があると述べられています。そして、論理をパウル・クレーの絵に例え、数学という学問が有用性とは隔たったものではなく、時には感性が必要であり、それが日常感覚を超越した発想に結びつくということを示唆されています。

 最近の人気書籍をピックアップすると「とてつもない数学」「美しい数学入門」「東大の先生!文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!」「生と死を分ける数学」などがあります。「とてつもない数学」の著者である永野裕之氏は、震災やパンデミックで先が見通せない世の中だからこそ問題解決力を高めたいと思うのは当然と考えられています。

 生徒諸君には数学の授業を楽しんでいただきたいと思います。