校長ブログ
教育現場のICT元年
2021.04.19
トレンド情報
4月19日
新学習指導要領における「予測困難な時代に、一人一人未来の創り手となる」というフレーズは、人間はコロナ禍のような未曾有の危難に直面しても、英知を結集して最適解を探究、未来を切り拓くことを意味しますが、その手段の一つとして、ICT教育が盛り込まれています。
海外ではかなり早い段階からICT教育が進められてきました。アメリカは2016年に連邦教育省が教員研修や大学の教員養成課程でICT技術に関する活用指針を策定。フランスは2018年に教育のICT化を打ち出し、デジタル技能を自己診断できるサイトに教員専用ページを設けるなどの工夫をしています。OECD調査では3位であった韓国は、1999年に情報教育を推進する専門機関を設置、2017年度から小中学校で段階的にプログラミング教育を必修化し、2019年2月までに教員研修を実施するのと同時に、教員養成段階でもティーチング・メソッドを学ばせています。
日本では新型コロナウイルス感染拡大に伴い、児童・生徒の"学びを止めない"取り組みの一環として、政府は遠隔授業などの能力を備えた小中高校の教員育成に乗り出す方向性を示しました。これまでの日本のICT活用力が他国に比べて見劣りした背景には、校内環境の整備が進まないだけでなく、授業で実践を試み、指導力向上に資する土壌がなかったことが挙げられます。
文科省は、2020年度からプログラミング教育を小中高で段階的に導入、ソフト作成などを学べるようにしました。教育のICT化に向け、小中学生に学習用端末を配る計画を前倒しして、2024年度にはデジタル教科書の全国での導入を目指しています。同時に、2021年度を「学校現場のICT元年」と位置づけ、現在、授業での端末活用法を解説する動画をインターネットで公開を開始。さらに、関連企業からの「GIGAスクールサポーター」を国公私立の小中高に派遣する費用を自治体に援助し、オンライン学習用の機器やソフトの使い方等を伝えるだけでなく、大学教員らによる「ICT活用教育アドバイザー」も派遣するバックアップ体制を整えています。
コロナ禍において、日本の学校では、ICT活用に秀でた教員が中心となり、校内研修を行い、試行錯誤ではあるものの、昨年6月に分散登校・全面再開した後もオンラインと対面を組み合わせた授業を行ってきました。しかし、公立小中高校で同時双方向の遠隔指導をできた自治体は全体の15%。OECDの調査(2018)によれば、「デジタル端末を授業に取り入れるために必要な技術や指導力を持つ」と評価されている学校に通う15歳の生徒の割合は日本では30%未満であり、参加79カ国・地域で最下位です。今、克服すべき課題が明確になり、デジタル化、グローバル化に対応する教育政策が展開されようとしているのです。
ICT技術がいかに進展しても、その役割は与えられた目的達成のツールにすぎません。他方、人間は、豊かな感性によって未来の "あるべき姿" を創造し、社会をどのような方向にもっていくのが最適かを考え出し、実践していくことができます。グローバル化が進み、多様性が求められる時代だからこそ、他者と協調しつつ、目的達成に向けた行動計画を設定、必要な情報を収集し、それを基に最適解を探究できる生徒育成に注力したいと思います。